TBSがひよこの息の根を完全に止めた

帰る前に、俺はショップで浴衣を買い込んだ
俺は着る気は無い
サトシに着せてやろうと思ったのだ　
その他、買い物をして車に乗り込んだ
座席に買い物袋を置く

………家にgo！
俺は呟き、ハンドルを三回叩いた
車が動き出す
サトシのもとへ帰ろう
俺の妖精は陽が沈むまでは、リカちゃん人形位の大きさだ
すんなりした手足と蒼い羽が背中を飾っている
それはそれはチョ～可愛いのだ
花より美しいのだ
そして、俺を愛してくれているのだ
俺達は種族を超えた愛で結ばれているのだ～だ～だ～
むふふ

しかし、陽が沈むとサトシの体は丸く光る球体に包まれる
そして、球体が消えると人間のサトシに姿を替えるのだ

サトシが願いを叶えてくれる蒼い花に願ったから
………ショウと結ばれたい‥……そう願ってくれたから………
サトシ、俺のサトシ
なんと健気で可愛いんだ！　
もう、舐めまわしたい！

と、甘～い思い出に浸る間も無く家に帰って来た
本来ならば、数時間掛かる道のりなのだが、魔法を使ったようにあっという間に着いた

「魔法を使ったように、ではありません
　使ったんです」

トゲを含んだ冷たい声が頭上より聞こえてきた
慌てて、車のドアを開けて外に出る
声の主がぬぅ～と姿を現す
色白の肌と金にも見える茶色の瞳の主
まごうこと無き、魔法使いブラック・カズナリの姿だ……

「すまん
　遅くなった！」

そう、サトシを連れて都会には行けない
妖精には人間界は危険だらけだからだ
俺の留守の間は隣に住む魔法使いカズナリと親友マサキがサトシの面倒をみてくれている

ただ、今日はカズナリは魔法学校まで行かねばならない大事な用があったのだ　
だから、行きも帰りもカズナリが車に移動の呪文を掛けてくれたのだ

しかし、マサキがいるだろう
カズナリがいなくても……

「あなた、バカなんですか！
　マサキにサトシを任せたら２人で冒険と　か称して出掛けるに決まってるでしょう　がっ！」

はい……マサキは前に一人でサトシを任せたら、山へサトシと出掛けたのだ
蒼の妖精は、悪霊にとってご馳走なのだ
その存在は愛で出来ている妖精だからだ
人間だけではなく、悪霊まで惹きつけてしまう
甘い蜜のような存在なのだ

カズナリはだから、俺の車ごと移動させたのだ

なぁ‥……カズナリ
お前は本当は凄い力を持つ……魔法使いなんじゃないのか……
こんな辺鄙な場所はお前には相応しく無いんじゃないか……

「では、行って来ます」
魔法使いは一言だけ残して姿を消した
よほど、急いでいたのだろう
確か、魔法学校の旅行の会議とか言っていたな……
なんで、魔法学校の会議に日本にいるカズナリが出る必要が有るんだろうか……
勿論、怖くて聞いていない
聞いてはいけない予感がした、という方が正確かもしれない

ま、早く帰れるのは有り難い
俺は買い物袋を車から降ろして家に入って行った

「ただいま～」

ただいまと言える幸せを噛みしめた
今まで一人だった俺はそんな小さなことも嬉しいのだ

そして、可愛い俺の妖精が
可愛い声で　オカエリ～ショウ～ピロ～
と出迎えて…………
出迎えて………くれない‥……
いや、ちゃんとお昼寝もしないで待っててくれたよっ
　
サトシがお気に入りのひよこにまたがり俺を出迎えてくれた
そして
「ショウ～ケーキ
　タベタイピロ～」

これだよ…………
ケーキだよ………はいはい
可愛い妖精は、わがままに育った
気に入らないとビービーと泣き喚く
家に置いてあるケーキやクッキーは全部食べてしまう
ったく、誰が育てたんだよっ

「ショウちゃん
　何言ってんの
　育ての親はショウちゃんでしょ？」

マサキ……俺の親友よ
今、そんな突っ込みしなくても良いじゃないかよ………

俺はサトシとマサキに声を掛ける

「マサキ、お茶いれて
　サトシ～今日はケーキは無いよ」

サトシの眉が下がる
ビ～ロ～

「今日はあんみつだよ」

ピ？ピ？
サトシが目を大きくして、小首を傾げて俺を見る

「ほらぁ～これだよ～　
　甘くて美味いよ～」

俺はサトシの前にあんみつの蓋を開けて置いてやる
サトシの体半分位の大きさがある

ピロ～ピロリン☆ピロリン☆
サトシが嬉しさにさえずる

ピロリンはサトシの最高に嬉しい時の鳴き声だ
マサキが台所にたつ
俺の耳元に一言囁いて

「ほら、ショウちゃんの育て方が悪いんだ　よ」

違う！
サトシの喜ぶ顔が見たいだけだっ
育て方を間違えたわけじゃないっ
誰か………間違ってないと言ってくれ
#やまの日祭りでぃ