おいしさとjfn健康
より
過保護のカホコというドラマの評価が高い。主演の高畑充希と竹内涼真の好演も光るが、いろいろ思い当たる節がある家庭も多いのだろう。
●AIも視聴率も好調 『過保護のカホコ』夏ドラマ大穴から本命へ
絵に描いたような箱入り娘の大学生が自ら箱を飛び出そうと成長するドラマである。これを家族システム論の教材として見ることも可能だ。
感情癒着状態に陥っていた3人の家族のうち、娘のカホコが、男友達から影響を受け、自己分化度を上げようとする。家族の感情癒着状態に変化が生じ、家庭内の人間関係にごたごたが生じ始める。
感情癒着状態というのは、家族のメンバーがお互いに自分の感情を別の家族に預けてしまい、一人一人の精神的な独立性が十分に確立されていない状態のことをいう。心理学の用語ではそのような心理状態にいる人を「自己分化度が低い」などと言ったりする。
カホコの変化から、連鎖的に父親にも変化が起きた。次はきっと母親に変化が起こる。そしてそのあとはきっと父親の家族、母親の家族にまで連鎖がおよび、家族みんなが自己分化度を高め、自立していくという展開になるのではないだろうか。たとえば父親の実家にはいくつになっても実家を出ない妹がいる。母親の妹の娘も心の傷を抱えている。
心理学では、家族は1つの有機的なシステムだとする考え方がある。どこかに変化が起こるとバランスをとろうとしてシステム全体に連鎖的に変化が起こる。自然の生態系と同じ。そして、問題を抱えている「個人」は、その個人に問題があるのではなく、家族というシステム全体に存在する問題を代表して表現しているだけだと考えることができる。
この物語ではカホコが家族全体の変化のきっかけをつくったが、きっかけは誰でもいい。父親が変化から変化しても、母親から変化しても、いずれにしても感情癒着状態を脱し、人間関係が一度ぐちゃぐちゃになって、収まるところに収まる過程で、それまで家族の中にあった歪みが解消される。そうやって安定的な時期と不安定な時期をくり返して、家族は進化する。まさに「雨降って地固まる」。
だから、家族に対する不満がある場合も、その人を変えようとするのではなく、まず自分があるべき姿になれるように変わってしまうというのが一つの手段。そうすれば家族全体も自然に変わっていく。いちどぐちゃぐちゃはするだろうけれど。
ユーモラスなドラマも、そんな視点で見てみるとさらに面白さが増すかもしれない。
※全国のFMラジオネットワークJFNの「OH! HAPPY MORNING」8月17日に放送した内容を掲載しています。
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