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楠木新 著
中央公論新社 2017-04-19 by |
この本のキーフレーズは「居場所」である。
それは物理的な場所のほか、心の拠り所、自分が楽しめる、役割を発揮するという意味も含めた居場所である。
しかし、定年退職者、特に男性の場合は、そんな居場所を持つことができない。
それは、定年直前まで会社を中心とした人生を送ってきたために、やることを見出せないからだ。
そんな定年退職者は口では「忙しい、忙しい」と言うが、この「やることがない」という状態は深刻だ。
それは、この本によれば、定年後の自由な時間は85歳まで生きるとすれば8万時間あり、なんと21歳~60歳までの40年間の労働時間を上回るというのだ。
こんな前途に広がる膨大な時間に対して、やることがない、というのは本当に深刻な問題だということがわかる。
著者自身、大手生命保険会社に36年勤務し、定年を迎えた。
だから、定年後の景色は、自分が実際に見て感じた景色ということになる。
ただ、著者には47歳の時に会社生活に行き詰まって体調を崩し、長期に休職した経験がある。
著者はそのときから、定年後について考え続けてきた。
それゆえ、この本には、ものすごい数の取材の跡と定年に少しでも関係がある書籍や映画、活動、著者が見聞きしたことの蓄積がある。
それが、この本の特徴であり、よく出回っている定年前後で起業した人へのインタビューをまとめた本とは一線を画するところである。
この本には、定年後のやることについてのヒントがある。
その一つには、子供の時代からやりたかったことへの回帰があるが、この本を読んで、なるほどと思った箇所があった。
それは、「豊中あぐり塾」(主として定年退職者が参加している共同ファーム)、「60歳からげんきKOBE」(ラジオ番組)の活動についてである。そこには、もちろん参加する人の主体的な意思や活動が大事だが、著者は義務や責任や役割を持っていることがポイントだと言っている。
定年後というと、すぐに自由に活動できる!と考えがちになるが、やはり義務や責任や役割がないと、打ち込めないのだと思う。
この本に、図書館での小競り合いの場面が載っていた。また私自身、最近、電車の中で若い人と小競り合いをする場面を見た。
もし、これらの現象がいらいらから生じていたならば、まさにこの本に書かれている現象が起きているのかもしれない。
この本はたいへんな力作だが、そんな定年後のあり方を考える必要がない時代の到来を強く望みたい。それには、この本に書いてあるとおり、現役でバリバリ働いているときからの準備が必要かもしれない。
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