トリスタンをナメるな!
昨日は九響の定期に行ってきました
指揮者は、フランクフルト歌劇場の音楽総監督のヴァイグレ。
バイロイトにも出演した指揮者の九響への登場。
東京では「ばらの騎士」を二期会で振るんですね。
会場の入りは、7割ほど。
確かに日曜日に大分で同じプログラムをやった後の火曜の福岡での定期で、やはりウィークデイど真ん中は、どうしても現役世代には通いにくいですね。
ただ、これほど指揮者が聴けるのは、なかなか無いことですし、かえすがえすも勿体無いなぁと思いました。
プログラムにはバイロイトの主役であるワーグナーと、彼と対立軸に据えられるブラームスの第4交響曲。
冒頭は、「タンホイザー」の序曲と、ヴェーヌスベルクの音楽。
後者は、オーケストラコンサートの実演では、比較的珍しいですね。
(もちろんオペラ全曲ならば聴けるが)。
カラヤンは好んで録音してますね。
九響のホルンの旨さと、チェロの艶やかなこと!
そしてヴェーヌスベルクの音楽のド派手なこと。
こりゃ、当時は賛否両論になったのも頷けます(笑)
「トリスタン」は第1幕への前奏曲。
得てして、なんとも冗漫な演奏、茫洋とした演奏にも出会いますが、フレーズをしっかりと区切り、その中でしっかりと鳴らすべきものは鳴らすという感じでした。
そして、チェロをはじめとする弦楽セクションには、「もっと歌って」と指示を出しており、もちろんこの作品の性格もあるかとは思いますが、どちらかというとガッチリとした構築感を求める傾向が強いドイツの指揮者にしては、珍しいかなと感じました。
しかし、この2曲までは、まだそこまでエンジン全開という雰囲気ではありませんでした。
「リエンツィ」になり、エンジンも稼働。
今では継子扱いされてる作品だけに、それ以後のワーグナー作品とは雰囲気は異なりますが、親しみやすい音楽ですし、派手で演奏映えする作品ですよね。
これを聴いた後、休憩を挟んでのブラームスの第4交響曲を聴くと、本当にこの二人の作曲家のカラーの違いを感じさせられます。
ブラームスは、やはり冒頭のH→Gの3度下降の出来で、かなりその演奏の印象を左右するというのが持論。
そして、私のブログの拙文をご覧頂いているかたは耳タコかも知れませんが、これはもうフルトヴェングラーが、他には真似手のいないくらいに見事な演奏を披露しているので、ちょっと他の指揮者は気の毒。
それはさておき、ヴァイグレのやり方は、Hの音をppから入りスコア通りのpに持っていくというやり方でした。
アゴーギクを多用する指揮者ではなく、インテンポで音楽を進めていきます。
この楽章の最後のティンパニの4つのE音も、多くの指揮者がやるような見栄を切ることもなく、スコア通りのアレグロ・ノン・トロッポで叩かせて締めくくりました。
それでも、再現部の第1主題の箇所は「もっと前に進もう」という指揮ぶりでした。
他方でデュナーミクに関しては、けっこう細かく左手でコントロールしていました。
第2楽章のホルンの旨さも目立ちますが、第1主題を奏でる管楽器を下支えする弦楽セクションのpizz.の繊細さは見事でした。
そして41小節からのチェロの美しい旋律!
ワーグナーではあれほど艶やかな音色を聞かせたのに、ブラームスになるとどこかくすんだそれでいて人懐っこさを感じさせる音色を聞かせてくれます。
チェロという楽器の持つ引き出しの多さを感じさせてくれるとともに、首席の長谷川さん率いるチェロセクションの素晴らしさにBravi !
第3楽章は、アレグロ・ジョコーソとの指示がありますが、九響の演奏ではそれにエネルジーコという指示も加わっているような覇気のある演奏でした。
中間部では、ヴァイグレが一気に音量を落としじっくりと聞かせ、それにより再び戻ってくる主部との対比が活かされてました。
そして、トロンボーンお待ちかね(笑)のフィナーレ楽章。
30分近く舞台上で待たされた挙げ句、首席はパッサカリア主題を吹かされるんだから、第1交響曲といいブラームスは酷なことをします(苦笑)
しかし、そこはさすが首席の高井さん、お見事にクリア。
そして、この交響曲の見せ場の一つ、97小節からのフルートのソロ。
ゆっくりな箇所だし、ヴィルトゥオーゾ的なテクニックが求められるわけではないのでしょうが、如何せんほぼ一人で音楽をやっているような感じなので、奏者にとってはかなりプレッシャーなのでは?
首席の大村さんは、ヴァイグレの解釈に合わせるように、あまり大きな抑揚は付けず、あくまでもパッサカリアの一つの変奏という感じの抑制された吹き方でした。
その後のクラリネットとオーボエの加わる受け渡しなんかは、是非九響を聴いたことが無い方にも聞いて欲しい、九響が日本でも屈指の木管セクションを有するという証左です!
そして再現部とも言える129小節からは、もう鳥肌もの!
どの楽器もフル稼働させられますが、やはりここまで待った甲斐がある(笑)トロンボーンのパワーにやられます。
そして最後の和音も、第1楽章と同じくフェルマータ的に延ばすことなく、スパッと終わらせました。
そして激しい拍手とブラーヴォの声。
いつもは帰りだすお客さんもいますが、昨日はその数も極めて少なく、聴衆の満足度が高かったことが窺えます。
またカーテンコールでは、楽員から指揮者への最大限の敬意が示されるシーンもあり、ヴァイグレと九響の協同作業は大成功だったことが判ります。
終演後に、知り合いの楽員さん何人かとお話しましたが、前の大分公演とも、またプローベとも違ったことを仕掛けてくるので、オケも必死に食らい付いていったとのこと。
うん、その必死さが聴衆にも間違いなく伝わってきましたよ。
こういうクラシックファンなら誰しもが知る名作でしっかりと結果を出してくれる九響に、ファンとしても嬉しくもありますし、是非東京公演とか実現させてあげたいなぁと思います。
次回の定期は9月下旬までお休み。
《おまけ》
不滅の名盤フルトヴェングラー&ベルリン・フィルのブラームスの第4交響曲。
トリスタン そうだ 京都、行こう。
ナイトオブゴールド SSS 2002
ナイトオブゴールド SSS 2002
ホント造形美
たまんないわー。