火花フリーク特設サイト
一昨日、友人とご飯を食べてて、「そういえば相席居酒屋ってあるね」という話になりまして
それで、やっぱり、ほら、常に新しい場所で自分を刺激してないとモノって書けないじゃないですか、
だから行ってきたんですよ、相席居酒屋に。
相席居酒屋を知らない人のために簡単に説明しておきますと、
女だけで来るお客さんと男だけで来るお客さんをどんどん相席にしていくというシステムで(女性は無料)
ポイントは相手が選べない、ということですね。だからどんな相手と相席になるかはまったく分からず、
よっぽど話が弾んでいない場合とかをのぞいて相手が変わることはほとんどないみたいです。
ただ、実際行ってみたところ、この「相手が選べない」というシステムはにはプラスの意味があって
どんな相手が来たとしても、とりあえず盛り上がろうという意識が働くということです。
もしかしたら、現代社会で恋愛が難しくなっているのは、むしろ「相手が選べすぎる」ことにあるのかもしれません。誰でも良い状態になってしまうと、誰を選んで良いか迷い続けることになり、逆に、強制的に人を決められると、その人の良いところを探して適応しようとするので、
人生では選択肢が増えることが必ずしも人を幸せにしないんだなと気づきました。
というわけで、(来る前は少し怖かったけど、来てみたら発見があるものだなぁ……)と感心したりしながら楽しく飲んでいたのですが
途中、「仕事は何をしているか」という話になったとき、ふと僕はこんな質問をしてみました。
「ところで、水野敬也って知ってる?」
そしたら、目の前に座っていた3人の女性が、間髪入れず
「知らない」
「誰それ」
「何してる人?」
という答えが返ってきたのです。
それで「じゃあ伊坂幸太郎は?」って聞いたら
「知ってる!」
「グラスホッパー見た!」
「超面白かった!」
という感想が、これまた間髪入れず返ってきたんですね。
それで「俺、伊坂さんとご飯食べたことあるよ」って言ったら
「マジで!?」
「スゲー!」
「紹介して!」
と間髪入れず言われて、「うん、紹介はできないけど『陽気なギャングは三つ数えろ』の面白さを紹介しておくわ」と説明しながら、あ、この人の視点は普通の人とは違う、クリエーター的な、作家的な視点だなというのをアピールしたあと、改めて、満を持して
「ところで水野敬也って知ってる?」
「だから知らないって」
「誰それ」
「何してる人?」
という言葉が、トントントーンとリズム良く返ってきました。
そこで僕は、相席居酒屋ではチェンジがほとんどできないと分かっていたにも関わらず、店員さんに「本当に申し訳ないですけど、これ完全に自分の力不足なんですけど、会話が全然盛り上げられなくて……チェンジしてください」って何度も頭を下げたところ
女性が余っていたのでチェンジが可能になり、新たに座った女の子に
「ねえ、水野敬也って知ってる?」
と聞いた瞬間
「あ、知ってる!」
という返答のあと、こう言われました。
「アパレルの人だよね」
こうしてこの日、合計8人の女性にこの質問をしたのですが、
水野敬也が何者なのか知っている人は一人もいませんでした。
というわけで、
今日、僕、誕生日なんですけど、ずっと仕事をすることにしました。
彼女たちの中で、まだ水野が誕生してないから。
日本の女性の中に水野が生まれるために、今日も水野は本を書きます。
目標は1000万部ですね。
1000万部の本を書いてれば、きっとみんな僕のことが分かったと思うんです。
もし、今年、1000万部の本を出せてたら、今日、相席居酒屋に行って何も言わずに誕生日ケーキを出してもらって
お店とかでケーキを出してもらうときって店員がろうそくじゃなくて花火をつけることがありますが、
僕のケーキには花火を5本つけてもらって
それを見た女の子が
「花火が5本? 花火……火花……又吉の火花は200万部……ってことは、あなた水野さん!?」
ってなったはずなんです。
というわけで、事務所のスタッフが用意してくれた誕生日ケーキに5本のろうそくを立て、来年の相席居酒屋をシミュレーションしながら仕事をしてます。
■ 11月28日に新刊「たった一通の手紙が、人生を変える」発売します!
たった一通の手紙が、人生を変える
これは僕が初めて書いた本格的な実用書だと言えるかもしれません。
そして、この本を書いている途中で、コンセプトが「天才の倒し方」だと分かりました。このブログで書いたことが次の本のコンセプトになることはたまにあるのですが(夢をかなえるゾウのときも「成功法則書を読んでもなぜ成功しないのか」がコンセプトになりました)、途中で気づいて(ああ、こんな形になるのか……)と驚きました。天才の倒し方のコンセプトは特にあとがきに生きた形になりましたので、ぜひあとがきだけでも読んでみてください(そして、この本は手紙の書き方だけではなく「文章術」の本にもなっています)。そして、なんといっても今日は僕の誕生日なんでね! これをアレすることが僕へのプレゼントになるとか、あまり言いすぎるとやらしくなるから言いませんけど、言うても、誕生日なんでね!
火花 あなたのビジネスに最適を
雅紀は花火を持って、俺は水を張ったバケツを持って公園まで歩く。
ガキの頃、雅紀に会いたくて何度も来た公園。なかなか心を開いてくれなかった頃もあった。噂話で傷つけて、すがるような気持ちで待っていたこともあった。俺を信じると包み込んでくれたのもここ。
陽が沈めば、涼しい風が吹き始めていることに気付く。そろそろ夏の終わりが近づいてきてるんだな。
「しょーちゃん♪ どれからやる? これは?」弾む声に、雅紀を見ればガキみたいな顔ではしゃいでいる。あの頃よりずっとガキっぽい。
最近の雅紀は柔らかな佇まいを見せていて、その一方で頼もしくもなった。店のカウンターに立つ姿は、魅力的な大人の男って感じで時々知らない人のように思えて焦ったりする。しっかりしないと置いていかれそう、なんて.....
「火、点けるよ? わぁー見て見てキレイ♪」
ちょっと感慨に浸っていたのに、花火にテンションが上がる姿は可愛くて。これからも、きっと翻弄されるんだろうって容易に想像ができて笑えた。
「しょーちゃん見て、しょーちゃんどれやる?、しょーちゃんどっちのがキレイか競争♪」
雅紀のしょーちゃんって呼ぶ声、火薬の匂い、火花に照らされる横顔。今年もいい夏だったな。
「雅紀これで最後、定番の線香花火!」ふたりで寄り添って火を点ける。パチパチって弾けて、シュッて落ちた。
「あー終わっちゃったね。」膝を抱えて、寂しげに笑う雅紀の肩をそっと抱いた。
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