きらめき★図書館

図書館

図書館に賭ける若者たち

Oside

最近、和也の帰りが遅い。
研究室が忙しいんだって。
それはそうだ。
和也は三年生。
来年には卒論書かなきゃいけなくて、
今よりももっと忙しくなって行く。
寂しいけど…
和也の行きたい未来に向かって、
俺はそれを支えたかった。
だから、寂しいなんて言葉にはしなかったけど…最近、和也の元気がない。
理由はなんとなく察しが付くけど、
俺はマジで興味ない。
和也しか見えないし、
和也以外は考えられないし、
和也以外のことは興味ないから。
色々噂があるのも知ってる。
そこまで俺もバカじゃない。
でも、せっかく任せてもらえた任務。
最後までやり遂げたかった。
感覚的に言うならば、
仕事仲間みたいなもんだ。
それ以外は、、、ない。
っていうか、
究極を言うと、
俺は和也を好きになってから女にノイローゼ気味だった。
匂いとか、爪とか、くるくる巻いた髪とか、
ちょっと、長く見てると気持ち悪くなるくらいだった。
でも、引き受けた仕事を投げるようなことは絶対にしたくないから…
俺は、和也が帰ってから
その溜まったストレスを癒してる。
そんな、ある日。
最近は、図書館に残らず家に帰っていたけど、
久しぶりに和也が早く終わりそうだからと今日ばかりは図書館で待ってることになった。
久しぶりで、
和也と居られる時間が少しでも増える。ってウキウキしながら授業を受けてた。
放課後はすぐに来て、
俺は図書館で1人課題をやっていた。
来た時は2、3人居たはずの人もいつの間にか居なくなっていて、ふと時計を見たらもう、和也が帰ってくるはずの時間を1時間も過ぎていた。
スマホを見るけど和也から連絡は入っていない。
きっと、まだ掛かっているんだろう、と
もう少し待つことにした。
でも、和也は来なくて…
しょうがないから帰ろうとした時…
「智くん」
夜村が、来た。
「助教授。」
「勉強?」
「はい。」
「…そ、う。」
夜村は近くに来て椅子に座る。
帰れねぇじゃねぇか。
日が落ち暗くなった周囲を窓から少し眺めながら思った。
その時、夜村が俺を呼んだ。
「ねぇ…智くん」
「…はい?」
「智くんは……付き合ってる人、いるの?」
上目遣い。
和也の方が可愛い。って思っちゃう。
ああ、和也に会いたい…
「居ますけど。」
遠慮なく答えた。
すると夜村は、少し、、、、笑った。
な、んだ?こいつ…
違和感を覚えた次の瞬間、
夜村はにっこり微笑むと衝撃の一言を言った。
「それは……二宮くんのことかしら?」
「…は?」
なんで、知って、、、
つーか、なんで、、詮索する?
「あら?違ったかしら?」
黙っている俺を見て夜村がそう言う。
でも、、、
別に怖くなんかねぇ。
「だったら?」
返す。普通に。何が?問題でも?
そう。
すると夜村は、また、ふっと、笑い言った。
「ねぇ、智くん」
「…」
「単刀直入に言うわ……」
「は?」
「……私と付き合わない?」
「はぁ?」
正直…吐き気がした。
無理、なに言ってんだ、コイツ。って。
「なんで、俺が?」
鼻で笑うように、返すと夜村はこう言った。
「…貴方は、二宮くんには邪魔な存在よ」
「、、、、は?」
突然、訳のわからないことを言い始めた夜村に俺は動揺した。
俺が?
二宮の、邪魔?
は?
固まっていると、夜村は立ち上がって、
ゆっくりと俺に近づいて来た。
「二宮くんの卒業後…貴方知ってるの?」
「…卒業、、後?」
「二宮くんが今後どうしたい、とか、どこに行きたい、とか。」
夜村の指が俺の胸に触れる。
知ら、ない。
和也が、、、どうしたいって…
すると、夜村がまた話し出す。
「私は知ってる。二宮くんがどうしたいか」
「…は…?」
止まったまま動かない。
そしたら、夜村が俺の耳元に口を近づけて言った。
「りゅ、う、が、く。」
そう、。
「留学?」
「二宮くんは、留学したいの。海外に。
今日ね、偶然城島教授と二宮くんが話していると、聞いちゃってね。
前から話が来てたみたいだけど、断ってたみたい。」
「な、、んで、、」
「さぁ?何故かしらね。でも、卒業したら留学することに決めたそうよ。」
「きめ、た?」
「えぇ。」
留学?
決めた?
聞いたこと、ない。
一回もそんな話…
すると夜村はこう決定打を打つように言った。
「ねぇ、智くん。あなた本当に二宮くんに愛されてるの?」
「は?」
「二宮くんが卒業後に留学を決めたのは、
貴方から離れたいからなんじゃないの?」
「…離れ、たい?」
「あなたに嫌気がさしたのよ。きっと。
智くんは二宮くんの夢を聞いたことがあるの?」
「……」
「貴方が二宮くんを縛り付けてるんじゃないかしら?貴方がいるから、二宮くんは…
ねぇ、智くん。私なら貴方を幸せにしてあげられる。そんな危険な恋を選ばなくても、私といれば一生変な暮らしはさせない。二宮くんの邪魔にはなりたくないでしょう?だったら、私と居た方が貴方は絶対、、、、、、幸せになれる。、、」
そう言って夜村は、
俺の肩を軽く掴むと、、
「好きよ、、、智くん」
そう言って、放心状態の俺に、、キスした。
その時、、、、背後から
「智ー!」
和也の声が聞こえた時には、もう、、、
遅かった。
続く…

世間では常識の図書館です。

つづく
関連記事
トラックバック
トラックバックURL