アホでマヌケな南こうせつ
南こうせつが目白押し♪
2016年7月22日、とうほう・みんなの文化センター(福島市)の大ホールでモンキーマジックのコンサートが開催された。4月9日、多賀城市文化センターからスタートした全国ツアーの19会場目(桜坂セントラルと中野サンプラザは2日連続開催)。会場はほぼ満員になり、1曲目から総立ちになった。
私はモンキーマジックのファンというわけではないが、ある人からチケットをもらったので、会場に足を運んでみた。椅子に座って見たかったが、立ち上がらざるを得なくなった。座ったままではステージ上のメンバーではなく、前の席の女性の背中を見続けることになるからだ。
ただ、身長179㌢の私が普通に立つと、後ろの席の女性の視界を遮ることになる。それでは申し訳ないので、コンサートの間、ずっと膝を折り曲げていた。身長を160㌢ぐらいにしたのだ。その格好を2時間半ほど続けていたので、ラストの方は両足がガクガクしてきた。
コンサートの終盤、抽選会が開かれた。箱の中に入った半券をメンバーが取り出し、印字された番号を読み上げる。その番号のチケットを持っている人に賞品をプレゼントするという流れだ。半券を取り出すとき、キーボード担当のミスター(サポートメンバー)が聞き覚えのある曲を弾いた。うすい百貨店(郡山市)のコマーシャルソング「うすいのうた」だ。
「うちの事務所に福島県出身者がいるんです。彼に『福島県民なら誰でもが知ってる曲はないか?』と聞いたら、『うすいのうた』と即答しました。ただ、今日のライブが近づくと、自信がなくなったのか、『ままどおる』の(コマーシャルソングの)方がいいかな…などと言い出しました(笑)」
「うすいのうた」は以前、本ブログで紹介した。作詞は山上路夫、作曲はいずみたく。歌い出しは「しゃれたセンスのうすい おしゃれなうすい」だ。一方、ままどおるは三万石(郡山市)が製造・販売する和菓子である。コマーシャルソングは「まま まま ままどおる みるくたっぷりママの味」で始まる。
モンキーマジックは福島県と縁が深い。ドラムス担当のtaxが生まれたのは福島市。しかも、とうほう・みんなの文化センターから約300㍍の位置にある福島赤十字病院でうぶ声を上げた。家はJRA福島競馬場の近くにあった。ただ、1歳になるかならないかの時期に仙台市に引っ越したので、当時の記憶は全くないという。
モンキーマジックは、仙台市を活動拠点にする4人組のロックバンドである。カナダ人の兄弟がヴォーカルとギター、日本人の2人がドラムスとベースをそれぞれ担当している。2006年にフジテレビのドラマ『西遊記』の主題歌「Around The World」がヒット。翌2007年にヨコハマタイヤイメージソング「空はまるで」がUSENの総合チャートとリクエストチャートで1位になった。
私は最近の音楽に疎いが、モンキーマジックの名前は知っていた。東北放送ラジオのリクエスト番組などで楽曲がよくかかるからだ。ただ、とうほう・みんなの文化センターの収容人員は1752人。モンキーマジックは日本人なら誰でも知っているというタイプのバンドではないので、人口29万人の福島市では不入りになるのではないかと心配していた。しかし、ふたを開ければ、前述したようにほぼ満員になった。ライブ市場が拡大しているという話は、やはり本当だったのだ。
音楽業界はビジネスモデルが変化していると言われる。ユーチューブなどが登場したことで、ひと昔前に比べるとCDなどの音楽ソフトが売れなくなった。音楽ソフトの生産規模は、1998年の6074億円が過去最大。それが2015年は2544億円になった。この17年間で約3500億円の市場が失われたのだ。有料音楽配信が普及しているとはいえ、パッケージ市場の縮小をカバーするほどの規模にはなっていない。
一方で、音楽ライブ市場の規模は急成長を遂げている。2015年は5万6042回の音楽ライブが開催され、動員数は4486万人となった。市場規模は3405億円。回数は前年比3.0%増、動員数は同25.7%増、市場規模は同25.2%増で、いずれも過去最高になった(統計を取り始めたのは2000年から)。市場の8割を占めるポップス系の増加が全体を牽引する格好になった。
コンサートの観客は、グッズを購入することが多い。その売上も見逃せない。原価数百円のTシャツが4000円ぐらいで売れるので、坊主丸儲けである。矢沢永吉のコンサートではタオルが必需品になっている。CDよりタオルの方が収益の柱になっているという説もある。ネットでは矢沢を「タオル販売業」と揶揄する向きもある。何が本業だか分からなくなっているのだ。
吉田拓郎とかぐや姫は1975年の8月2日から3日にかけて、つま恋多目的広場(静岡県掛川市)でコンサートを開催した。主催はユイ音楽工房で、5万人以上を動員した。元祖・野外フェスとも言われ、規模・形式とも前例のないものだったため、伝説になった。
しかし、今は5万人規模のライブが珍しくなくなっている。ドーム球場など市街地にコンサート向きの大型施設ができたことが大きい。ジャニーズの嵐は2015年9月19~23日のうちの4日間(21日は休演)、宮城スタジアム(利府町)で復興支援コンサート「ARASHI BLAST in Miyagi」を開催した。シルバーウィークの4日間で延べ20万8000人を動員。全国のファンが泊まりがけで押し寄せたため、福島市や山形市のホテルまで満杯になった。
ライブ人気の高まりは、チケット争奪戦をヒートアップさせている。定価で入手したチケットを高値で転売する輩もいる。
北海道警札幌中央署は2016年9月、嵐のコンサートチケットを転売したとして、香川県善通寺市の女(25)を古物営業法違反(無許可営業)の疑いで逮捕した。女は香川県公安委員会の許可を受けていないのに、2015年11月から同年12月までに計4回、札幌市内の女性ら3人に対し、嵐のコンサートチケット5枚をインターネットの転売サイトで売買した疑い。また、2014年10月から2016年4月までに全国31都道府県の168人に嵐などのコンサートチケット299枚を販売し、約1000万円の売り上げを得た疑いもある。チケット交換サイトでチケットを入手、転売サイトに出品して高値で販売していたという。
こうした行為に歯止めをかけるため、日本音楽著作者連盟など4団体は2016年8月、嵐やMr.Childrenなど100組以上の邦楽アーティストと共にコンサートチケットの高額転売に反対する共同声明をWebサイトなどで発表した。「音楽の未来を奪うチケット高額転売に反対します」―。高値のチケットによりファンが経済的損失を受け、コンサートを楽しめる回数が減ったり、グッズ購入の予算が奪われている可能性もあると指摘した。
松山千春、さだまさし、井上
陽水、南こうせつらは近年、目立ったヒット曲がない。しかし、知名度が高く、往年のヒット曲もあるため、ライブの動員数は堅調だ。千春やさだは爆笑トークを売り物にしており、それ目当てにライブ会場に足を運ぶファンも多い。千春、こうせつ、伊勢正三は東日本大震災の復興支援の一環として、ジョイントコンサートを何度も開催した。
先日、実家に帰ったら、姪(高校生)が「○○のライブを見に行く!」と騒いでいた。○○は聞いたこともないバンドなので、失念してしまった。「会場は?」と聞くと、代々木第一体育館(東京都渋谷区)だという。「代々木まで行くの?」と確認すると、平然とした顔で「うん」と言った。往復の交通費(東北新幹線)とチケット代で計2万円はかかるはずである。高校生にとっては大金だが、姪にとってはそれぐらいの価値はあるらしい。
最近は若者の「○○離れ」がよく話題になる。車離れ、テレビ離れ、酒離れ、タバコ離れ、ギャンブル離れ、結婚(男女交際)離れ…。その状況でなぜ、コンサートだけは逆の現象が起きているのか。さまざまな説があるが、いまひとつピンと来ない。
プロ野球でも、同じような現象が起きている。プロ野球はテレビの地上波中継が少なくなったため、人気が低下していると言われる。しかし、スタジアムは満員になることが多くなった。特にパ・リーグが顕著だ。1990年代まではスタジアムで閑古鳥が鳴いていたのに、最近は満員が当たり前になった。なぜ、こうなったのか。次の機会に改めて考えてみたい。
【写真】
・モンキーマジックのPRチラシ
・「うすいのうた」を制作したうすい百貨店
・三万石のままどおる
・JR仙台駅に掲げられた嵐の巨大ポスター
・コンサート会場にもなる代々木第一体育館